最近「リスキリング」や「リカレント教育」といった言葉をよく耳にます。政府が積極的に旗振りしていて、それなりの財政支出もあるようです。転職という文脈で語られることも多く、我々にも関連のあるテーマなのですが、個人的には、どうにも違和感を覚えます。
何がしっくりこないのか、今日は私なりに整理してみたいと思います。
まず「リスキリング ≒ 学び直し」という言葉には、ビジネスパーソンは「以前に学んだことはある」が「現在は学んでいない」という前提が感じられます。そこには、学ぶ(勉強する)のは学生がすることで、社会人は仕事(だけ)をするものという思い込みがありそうです。
何故そのような前提があるかと言えば、学ぶためには学校に行かねばならない、という更なる思い込みがあるように思います。その証拠に、政府のリスキリング支援策・助成金等のほとんどは、何らかのスキル講座受講や資格取得の支援ばかりです。
以前、転職する際に重要なのは「資格」ではなく「実務経験」である、という旨のブログを書きましたが、これは「学び」を主題としても、同じことが言えるというのが、私の意見です。
学校で学べることは、その分野において最も初歩的なことであり、実務においてはあまり役に立たないことが多いです。一方、真に役立つスキルは、仕事をしながら、実務経験を通して身に着けなければなりません。つまり真の学びは、学校に行って(お金を払って)得るものではなく、仕事を通じて(お金をもらって)得るものなのです。
そう考えると、ビジネスパーソンは日常的に仕事を通じて学び続けているはずで、改めて学び直せというのは、余計なお世話という気がします。もちろん、もう何年も同じことを同じやり方で続けているだけで、何も学んでいないという方がいれば、それはまずい状況に違いありません。ただそのような方に必要なのは、資格取得に向けて学校に通うことではなく、現在の仕事に対する向き合い方を改めることです。
もし現在の仕事にはもう情熱を持てない、あるいは仕事に全く将来性がないということであれば、その時は、転職が選択肢になります。
でも転職するとしても、そのために学校に行くことが重要なのではなく、自分の情熱がどこにあるかを真剣に考える、仕事を通じて一生学び続けられる環境を探し、選択する、ということが何より大切だと思います。
最後に、そもそもですが、人は生まれた直後からずっと学び続けている訳で、それは大人になっても変わりません。むしろ、生きることとは、学ぶこと、です。
今頃「これからの時代は学び直しが必要!」と叫ばれても、古今東西、人生に学びは必要であったし、学びは一回や二回で終わるものではない、というのが私の考えなので、どうしても違和感があるのです。
政府が持ち出すこの手の議論って、いつも筋が悪いと感じるのは、私だけでしょうか?
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